エネルギーの通り道を開く
仙道においては、小周天や大周天といった体全体の気の通り道を開くことで、燃え上がるような体力を身につけることができるようだが、俺の開発した特殊瞑想では、こんな程度のものではない。
そもそも忙しい現代人が、毎日毎日、いつ効果が出るかもわからない呼吸法を続けられるわけがない。ほぼ、不可能と言っていいだろう。
そこで俺は、仙道以外に以前からかじっていた西洋魔術の知識をふんだんに盛り込んで
究極の自己改造法を編み出した。
これは地味で苦しい仙道修業と違って、コツさえつかめば誰でも簡単にできる。
肉体を完全にリラックスさせ、左脳から右脳、右脳から松果体、松果体から先は、現実世界ではなく仮想世界へと繋がっているのだが、そこから先の世界へ、一本のエネルギーの回路が通ったとき、強大な力が流れ込んでくる。
催眠術などで、被験者は一時的に脳の神経細胞の回路に特殊なルートが形成される。
しかしこれはあくまで一時的なものだ。
自分でやる場合は、まず妄想レベルから入る。妄想は浅い神経細胞間のルートを形成する。次に、信念レベルに入ると、強い神経細胞間のルートが形成される。ここからは
DNAにも情報が伝達される。
DNAレベルで情報が伝達されると、体細胞の分裂時に、変化したDNAが作られることになる。人間の細胞は1日に数千億個が入れ替わるので、この時点で、変化前のDNAを持つ細胞体と変化後のDNAを持つ細胞体の混合された肉体を持つことになり、この間は、かなり不安定な状態となる。
さらに続けていくと、変化後のDNAを持った細胞体のほうが多くなり、全部入れ替わるころには、まさに完全に生まれ変わることになる。
そしてこのDNAに全ての情報が刻まれるのだが、超能力者の場合、物理法則も能力者のテリトリー内では能力者のルールに従う。
仮想世界からダイレクトに流れ込んだエネルギーは、もはや現実世界の既存のルール以前の力が働いているので、何でもありなのだ。
そもそも物質世界は、エネルギーのみ存在する仮想世界から飛び出し、分化したエネルギーが、様々な形態をとって存在しているに過ぎない。ならばその元々のエネルギーをそのまま取り込んだなら、いかなる事象をも引き起こすことが可能ではないか。
実際俺は、悪魔召喚の儀式や、類似の黒魔術などで、奇跡を起こしてきた実績がある。
これは妄想ではない。ただ、力には責任が伴う。下手すれば自らをも滅ぼしかねない。
よくよく考えて、自らに許可を出さねばならない。